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ようこそ、アムステルダム国立美術館へ

@渋谷ユーロスペース

 オランダのアムステルダム国立美術館に改装計画が持ち上がりスペインの建築家コンビが奇抜なアイデアでコンペティションを勝ち抜き内装をほぼ完全に撤去するまで工事は進むがサイクリスト市民グループらが「この設計では通路が狭くなる」とけちをつけはじめたために改装工事がストップし、新装開館のめどが立たなくなった館内では暇をもてあました研究員たちが展示品配置の皮算用にふけるが次第に煮詰まってねばねばしはじめ、辞職者も出る。一方でコンペを通ったデザインに次々とけちがつけられることにいらだちを隠せない建築家コンビは美術館の改装主任と美術館館長に対してそのいらだちの矛先を向け、市民団体と館員と建築家コンビと役所と新聞から責め立てられた館長は辞職を決意しウィーンに新居を構えて音楽と文学の日々を夢見る。その傍らでは野心と自信満々の17世紀部門主任研究員が次の館長は俺だと豪語するも無派閥で地味な存在であった外部の研究員が次期館長に決定し17世紀部門主任は家庭菜園を耕して鬱憤を晴らす。度重なる設計変更と事業延期に腰の引けた入札事業者はぽつぽつと去って行き、残った唯一の業者は予定落札価格を遙かに超える入札額を提示してきたため館長と入札担当者の面目は丸つぶれとなる。これらの俗っぽいあれやこれやから超越したところでは日本の仏像大好きな中世・アジア部門主任研究員が日本から金剛力士像を買い付けようと奔走し館長が日本へと買い付けに飛び、館長はビジネスホテルの窓からハイウェイを流れる車のライトを眺めながら歌謡曲を聴いて一時の物思いにふけるのであった。「この美術館は俺の嫁みたいなものだ」と豪語する管理人は内装がなくなり客も来ないがらんどうの美術館を毎日見回り壁のヒビの数と場所を脳裏に焼き付けてまわるが次第に彼もいらだちを隠せなくなり鳩を追いまわして遊んだりするがやはりもやもやを隠しきれず、改装途中の通路に内側からバリケードを築いて日夜座り込みをするサイクリストたちを排除するという強硬手段に突如出たところで映画は終わる。
 えーと、僕が見逃したのかもしれないけどあそこまで大々的な改装工事をしなければいけない理由がよくわからなかった。あと北区と南区をつなぐ重要な通路が工事期間中は完全に使用不能になっているにもかかわらず、ここまで話がぐだぐだなまま引っ張られ続けるのはなぜだろう。普通はもっと早くどちらかが根負けするか市民がぶち切れるのではないだろうか。館長も美術館のためとか雑な言い訳してないで設計案ごとに通路幅とかから予想可能通行量とかを計算して出してみせればよかったんじゃないか。ほんとに有能なのかあの人。
 こういった美術館をめぐる組んずほぐれつを展開の主線に据える一方で、新装開館を見据えて収蔵品や内装を黙々と修復する修復士や金剛力士像に恋い焦がれる仏像男子研究員や建物に若干偏愛的な愛情を抱く建物管理主任のエピソードが挿入され飽きることはない。
 とりあえず美術館外壁にひっついているカイパースの彫像が物陰から思い人を見つめる女学生みたいであった。

 あと、三井記念美術館の「奈良の古寺と仏像」展をその前に見てきた。ペンライトサイズのLED照明を使ったライティングが非常に良かった。高さや反射板の具合を調整すればかなり自由度の高い照明を構築することができ、彫像のサイズや形態に合わせた雰囲気作りができる。エッジの立った衣紋や鎧の造作、細い指先の繊細な表情は照明具合如何でいくらでもその見え方を変えてしまうので、LED照明の導入は美術品展示のあり方にかなり影響を与えるように思う。
 ちなみに僕は、仏像の中には護摩を焚く炎のゆらめきに照らされたときの陰影の見え方を意識して作られたものがあるのではないかとこのところ考えている。なのでそういったものを再現できる照明があったら面白いなぁ。もうあるかもしれないけど。
 仏像は有名なものがたくさん集められていて面白いよ。菩薩の下腹がぽっこりしてるのはやっぱり修行が厳しすぎて栄養足りてないの、とか四天王みたいな闘う仏様のほとんどはなぜジョジョ立ちなのか、とか色々思うところはあった。とりあえず東大寺の増長天がうちに欲しい。あと僕はやっぱり半跏思惟像の指先の表情が好きだと思った。
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